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2006年3月18日号
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羽衣伝説、悲恋 神秘に満ちあふれ

 早春の余呉湖周辺の天候は気まぐれだった。京都では晴れていたのに氷雨、氷雨。それがみぞれになり雪になる。いや、昼過ぎには晴れ間がのぞき、それまで、鉛色にくすんでいた余呉湖の湖面をほんのわずかだが、照らし出しさえしたのだ。

悲恋の舞台となった余呉湖だが、ひっそり静まり返った冬場はワカサギの釣果を競う釣り人らが集う。やがて春が来る
余呉湖(滋賀県余呉町)
 余呉湖は周囲6・4キロ、約1・8平方キロある。琵琶湖の北端とは賤ケ岳で隔たり、湖面は穏やか。「鏡湖」とも呼ばれ、ひと筋の陽光で鉛色から濃紺に変わる湖面は、天女など、あまたの伝説に彩られたこの湖が、神秘に満ちあふれていることをあらためて納得させてくれる。

 作家の水上勉は、この余呉湖を舞台にした小説「湖の琴」を昭和40(1965)年に発表した。かつて木之本町は、三味線や琴糸などの蚕糸業が盛んで、多くの農家が蚕を飼い、糸取りを副業としていた。物語では、そんな大正末から昭和初期のころに、若狭から糸取り奉公で来た娘と同郷の青年の純朴な恋が、やがて悲恋になる。作家独特の語り口で話が展開する。

 主人公・さくは、16歳のとき、余呉湖の南、賤ケ岳のふもとの西山地区に奉公に出る。そこで同郷の男衆・宇吉と恋仲になる。ところが宇吉が兵役で留守をしている間に、京の長唄師匠が、さくを見初め、師匠の家で働くようになる。やがてさくは身ごもり、西山に戻される。しかし兵役から帰った宇吉にこのことを話せず、湖畔の小屋で首をくくり自殺する。そして、その死に生きるすべを失った宇吉もまた、さくと一緒に糸箱に入り、深い湖底へと沈む。

 当時、人手が足りず、若狭や越前などから、多くの娘たちが糸取りに働きにやって来たという。小説に登場する「源八」のモデルとなった料理旅館「想古亭庵源内」の4代目・林源栄さん(47)は「小さいころから、小説のような話はいっぱい聞かされました。でも明るい話が多く、悲劇話はなかったですね」と。同旅館には糸取り農家があり、資料館として保存される。

 生糸はその後、ナイロンなどの化学繊維に押され、衰退の一途。木之本町役場の山口浩史さん(30)は「現在、西山・大音地区で国選定の技術保持者佃三代子さんを含め数軒」と現状を語る。余呉町には「残っていない」=筒井伸彦地域振興課長補佐(51)=という。それでも筒井さんは、昭和50年ごろ「アンノン族と呼ばれた若い女性らが、小説の文庫本を手に悲劇の舞台へ訪れたことを、今もはっきり覚えている」と振り返る。

 一瞬、明るい日差しに輝いた湖面も、雲が覆うにつれ、静寂さを取り戻していった。最後に水上はこういう。

 さくの死の真否を疑い、作者の絵空事と一笑する読者があれば「私(作者)はただ晩秋の夕暮れ時に、余呉の湖畔に立ち給(たま)えというしかない」と。

【糸とり資料保存館】木之本町の大音、西山両地区は、昔も今も糸取りの里として知られる。賤ケ岳から流れる水を使って紡ぐ三味線、琴の糸はその質の良さで有名。館内=写真左=には地区に伝わる技術や道具類を展示する。入館無料。希望者には繭(まゆ)の糸取り作業の実演などもある。4000円〜(要予約)。電話0749(82)4127(木之本町大音)

【菊石姫と蛇の目玉石】仁明天皇のころ、領主桐畑太夫の娘・菊石はある年、干ばつで苦しむ住人のため湖に身を投じ、蛇となって雨を降らせたという。また目の病で悩む人たちには自分の目玉を湖に放り投げささげたという。その伝説にちなんで昭和56年10月に祭壇と石碑が建立され、今も地の人たちに崇められる。(余呉町川並)

【湖畔の天女像】高さ約1メートルのブロンズ製。羽衣をまとった優美な姿を表す。湖周辺は羽衣伝説に彩られる。中でも「衣掛柳」は観光のシンボルとして有名だが、こちらはあらたに平成6年11月に建立された。座石に「余呉湖」「賤ケ岳 寄りに鴨をり 余呉の湖」の文字を刻む。(余呉町川並)

【国民宿舎 余呉湖荘】賤ケ岳のふもと、湖畔南岸に立つ。山菜と湖魚料理で知られ、冬場は鴨すき、ぼたん鍋もある。これからの花見の宿泊(1泊6500円)シーズンには、「海津大崎の花見船」も出る。桜のお菓子プレゼントなどの特典も。予約制。電話0749(86)2480(余呉町余呉湖畔)

調べにのせて クラシック・バレエの魅力

 バレエといえばチャイコフスキーの3大バレエ「白鳥の湖」「くるみ割り人形」「眠れる森の美女」などが有名ですが、それ以外にもクラシック・バレエにはさまざまな作品があり、作品ごとに趣の違った内容が楽しめます。

 バレエの魅力に手っ取り早く迫りたいという方にお薦めなのが、「バレエ・ガラ」公演(名作バレエのハイライト・シーンで構成)です。回転やジャンプといったダンサーの華麗なテクニックや繊細な表現力の数々に、思わず「すごい」と叫びそうになります。

 でも、何といってもクラシック・バレエの醍醐味は全幕上演です。出演者たちの豪華な衣装やきらびやかな群舞(コール・ド・バレエ)、華やかな舞台美術、それに生のオーケストラ演奏が加わることで、ダンサーの織りなす身体表現が一層輝きを増します。特に世界トップレベルのダンサーたちの、研ぎ澄まされた肉体と洗練された表現力は、まさに“生きた芸術”といえるでしょう。

 また、バレエは目を楽しませてくれるだけでなく、感情を揺さぶる音楽やストーリー性など、ひととき現実を忘れて幻想的な夢の中へといざなう不思議な力を持っています。クラシック・バレエが長い年月を経て今もなお愛され続ける理由は、このあたりにあるのではないでしょうか。

 5月にびわ湖ホールで上演するボリショイ・バレエ団「ファラオの娘」は全幕バレエの魅力のすべてを含んだ舞台です。ぜひこの機会にバレエをお楽しみください。

  (びわ湖ホール・森本義広)

パティスリー Sucre(シュクル)
守山市守山3 電話077(583)5202

 奥の厨房まで見通せる店に、笑顔で応対するパティシエたち。「うちは販売スタッフがおらず、作り手がすべてやります。ご要望にすぐ対応できますし、いろんな声を菓子作りに生かせますから」とオーナーシェフの栖養泰彦さん。開店から5年、フレッシュフルーツをふんだんに使ったケーキで人気を集めています。

 繊細な工芸菓子も得意とし、写真手前のキャラクターデコレーションケーキ(予約制・5号3150円〜)は評判を聞いて訪ねてくる人もあるほど。「時間は倍以上かかりますが、喜んでくださる顔が見たくて」。子どもから大人まで好評とか。写真右奥はいちご畑(399円)、左奥は赤い果実のクラフティ(367円)。カフェコーナーもあり、ケーキと飲み物のセットは577円です。

大津市 藤本真美さん推薦

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